Monday, September 25, 2006

TERMINAL VELOCITY OF THE LIGHT : little God

「歓喜」

それは美しき神のきらめき
楽園よりの乙女
私達は感動に酔いしれ、その神々しい楽園に足を踏み入れる。


鮮やかなシリウスの下で二人は抱き合う。
炎のように燃え上がるその愛情の花びらは、時に激しく、そして儚げにも見える。
自らの両手に積み上げられた結晶はただの「灰」。
燃え尽きようとしている僅かな火が、その無慈悲なまでの舌先へと触れる。
有刺鉄線の針金にも似た、若くも激しい気性はその一角の無表情さで他者を近づけようとはしない。

ここは誰もが訪れる「死」への架け橋。
愛さえも夢さえも、ここではただの虚無の供物にすぎない。

天使は翼を捥ぎ取られて、鮮やかなまでの傷口を血に染めていた。
僕の心も同じ。
悲しみに暮れた壊れた心。
癒しさえ見つからない痛みと共に自分は、何時しか訪れる「死」に憧れた。



クスリでラリった少年が屋上から飛び降りた。
死にゆくその姿はまるで天使のように微笑んでいたという。
飛び散った血に、砕けた頭蓋にあふれ出した脳を見つめながら、色褪せていく色彩の情景を思い浮かべていた。
日常は地獄だ。
自分が生きる意味は一体どこにあるというのだろうか。
誰も教えてはくれない。
誰も助けてはくれない。
自分は孤独だ。
悲しみという絶望の中で、底なしに埋もれていく思いに駆られながら、
何処までも、何処までも、堕ちていくのだ。


翌日の朝に、その場所へ多くの花が添えられていた。
彼の友達達だろうか。
花束を添えて涙を浮かべていた。

「泣いてくれる人がいるだけでも幸せだったのかもしれない」



川沿いに向かって、土手から見下ろした空に工場の白い煙が大きな空の中へと流れている。
そんないつもの僕だけの空を見つめる度に、あの空の遥か彼方へといってみたいと思っていた。
その先に一体何があるのか、いつも心に燃え上がる好奇心を抱いていた。


静かな痛みとともに流れる涙の雫を、僕は時々止められない。
人間は泣く。唯一涙を流せる動物だ。
僕は一体何のために泣いているのか、それすらも分からなかった。
自分の中でいつも感じる違和感。
心がズタズタに引き裂かれていく感触。
その痛みと共に分け合う感情の果て。
悲しみというのは永遠に値するものだ。

瞬くような鮮やかな光が僕の瞳の中に溶け落ちていく。

その一瞬のような煌きにわずかな微笑を浮かべていた。
まるでそれは麻薬のように、自分の心を焦がし、陶酔できるその思いの揺らめきをいつしかずっと追いかけていた。
激情のようなスリルを。快楽を。
求めずには要られなかったのだ。


明くる朝、気温は何故かむせ返るように蒸し暑く、ギラギラと焼け付くような陽射しをただ睨みつけていた。
近所の公園から不思議に引き寄せられるように歩いていった。
そこで見た日常的な子供達が遊ぶ風景。
その公園の片隅にわずかに日陰に位置する場所があった。
そのすぐ側にあるベンチに一人の少女が本を見ながら座っている。
しかし、時折思い出したように何か口を動かす素振りを見せる。

疑問に思った自分は近くに歩み寄って行った。

「晴れやかなメロディー」

少女は手に持っていた本からまるで朗読するかのようにその一節を歌ってみせた。
澄み渡るその声がまるで幻覚のように僕の心に溶け込んでいった。
その美しき声色に心奪われていたのだ。

自然に瞳を閉じると僕は夢を見た。
その艶やかに染まる景色を。
まるで「黄昏」のように静かに包み込む、優しさに溢れた刺激は僕の心に癒しを与えてくれた。

しばらくするといつの間にか少女は居なくなっており、自分がまるで浮遊していたかのような思いに囚われた。



日常と非現実を結び、まるで自由に行き来するかのようなこの胸の高鳴り。
何かが始まるような予感を感じながらどこまでも晴れ渡った青い空を見つめ続けた。

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